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髪を通して世界探索をする、とある美容師の研究日誌 — Field Notes from a Hairdresser's Lab

FILED BY MASASHITT

現役美容師・29年目。サンフランシスコを拠点にヘアサイエンスとエフィラージュカットを探求しながらHair Caffe Labを運営。「科学と非科学、ハイクラスとストリート」—その交差点に挑み美容に留まらない知見と私見をマイペースに綴ります。/29-year hairdresser based in San Francisco. Exploring hair science and the Effilage technique while developing Hair Caffe Lab. Navigating the intersection of science and intuition, high-end and street — writing it all down at my own pace. About this lab →

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現在の場所:ホーム / LAB NOTES / S-7 Development Notes #3|同じ「泡」なのに、こんなに違うのか

S-7 Development Notes #3|同じ「泡」なのに、こんなに違うのか

2026-06-08 By masashitt カテゴリLAB NOTES

← 前回の記事:S-7 Development Notes #2|本を読む程に、疑問が増え続けた開発初期

泡なんて、どれも同じだと思っていた。

正確に言うと、泡のことなんて、ほとんど考えていなかった。立てばいい。それくらいの認識だった。シャンプーの良し悪しは、洗い上がりとか髪のまとまりとか、そういう「結果」のところで決まるもので、泡そのものに性格があるなんて、作り始めるまで一度も疑ったことがなかった。

でも、自分の手で配合するようになって、その思い込みはあっさり崩れた。

手しかわからない、しかも美容師の手にしかわからない感覚…

前回からずっと、ひとつ課題が残っていた。泡の中の「滑り」を、もっとちゃんと追求したい。界面活性剤って、種類ごとにキャラクターが全然違うらしい、というのは何となく分かってきていた。でも、それが具体的にどう違うのかが、僕にはまだ実感として分かっていなかった。

本を読んでも、スペック表をいくら見ても、これがなかなか分からない。「滑り」とか「もちもち感」みたいなものは、数値になってくれないから。言葉にするのさえとても難しい感触だ。

だから、自分の手と髪で確かめるしかなかった。

実際にやってみて、よく分かった。ひとことで「泡」と言っても、ねっとりした泡、もちもちの泡、スッキリした泡、ベトベトする泡があって、さらにお湯で流したときの「流れ感」みたいなものまで、それぞれ違う。同じ白い泡なのに、手のなかでの居心地がまるで別物なんです。

では、どう設計すれば良いのか…?

そこで、3つの界面活性剤を、できるだけ「単独」に近い形で比べてみることにした。時間かかるなぁとげんなりしたけれど、他に方法はない。泡成分(界面活性剤)の種類を、仮にA、B、Cとしておく。

ここで大事なのが、条件をそろえること。共通の成分の量を揃えて、ある1つを共通の土台として全部に入れておく。そうしないと、何が違いを生んでいるのか、結局分からなくなってしまうから。

地味な作業だけど、ここを雑にやると、あとで全部やり直しになる。逆に言えば、ここさえ丁寧にやっておけば、出てきた違いはちゃんと信じられる。

同じ「泡」なのに、こんなに違うのか

で、実際に手のなかで泡立ててみて、本当に驚いた。

Aは、これだけでも泡の質がとても良かった。きめが細かくて、滑りもいい。正直、「もうこれだけでいいんじゃないか」と思ったくらい。流した後の髪の質感も申し分ない。ただ、細かい微調整は必要って感じだ。少なくともメイン成分にはなるだろうとゆう予感がした。

Bは、泡立ちも、泡の滑りも、ボリュームも、どれもいまいち。…ただ、洗い上がりに独特の「キュッ」とした感じがあって、もしかすると洗浄力そのものは強いのかもしれない、という引っかかりが残った。でも、この適度なスッキリ感なら、重過ぎる泡を、洗浄力は維持したまま軽やかに出来そうだなと思った。

Cは全部に入れていた共通の土台で、これが全体の質感を、けっこう下から支えていた。これを入れるだけで泡の質感が一気にリッチになる。

同じ「泡」という言葉で、僕はずっとひとくくりにしていた。でも、質も、滑りも、量も、こんなに違う。

泡は、作るものじゃなくて、設計するものだった

この気づきが、たぶん全部の出発点になった。

「どの泡を、どう組み合わせるか」。シャンプーづくりって、そういう設計の話なんだと、このとき初めて腑に落ちた。泡どれでも似た様なものだと思っていたけど、そうじゃない。泡は、精密に設計するものだった。

だからまず、他の成分をあれこれ足していく前に、この泡の部分を、徹底的に自分の理想に近づける。それを最初の目標にすることに決めた。香りも、仕上がりも、そのあとの話。まずは、泡。

この時は、まだAが本命だった

正直に書いておくと、このときの僕は、Aにかなり惚れ込んでいた。

泡の質も、洗い上がりの髪の質感も、本当に良かった。苦労せず良い成分に出会えて喜んでいた。これを軸に組み立てていけば、きっといいものになる——そう信じて疑っていなかった。

…まあ、このAが…あとで思わぬ形で姿を消すことになるんだけど。

それはまた、別の回で。


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