時の移ろいは、時として色濃い思い出までも持ち去る。
輝かしい思い出も、
苦い思い出も。
時間とは不思議な物で、
その威力は形容し難い程に強く強く、
そして単一方向に、冷酷に、
ただ、押し出す。
その冷酷で規則的な時の移ろいは、
場合によっては人々の心に救いをもたらす。
僕とてこの恩恵にありがたみを感じる事も多いのだ。
やっと傷が癒えた。
今なら、
お話出来る。
そう思った。
少し、書いてみよう。
こんな出来事があった。
例えば信号機。
青が点灯している。
青は・・・進めだ。
進む。
赤は?
止まれだ。
命が惜しい奴は皆従う。
疑いもせず。
今から3ヶ月くらい前だろうか、
僕は元気だった。
体調がいい。
身体も軽く、思考も冴えていた。
生き生きと仕事をして、
バランスよく食事を摂り、
ぐっすりと眠る日々。
最高だった。
そんなある日、ウンチをした。
いつも通りの行為。
毎日ウンチをする。
日々快便。
でも今思えば、
その日ひとつの気付きがあった。
ウンチが、なんか、少し変だったんだ。
少し、なんとなく、滑らか過ぎる感じだ。
メルティーな、
シルクタッチというか、
なんか、そんな感じだ。
ん?
と思ったが、
ウンチまでセレブになってきたか?
とかなんとか独り言とか言っちゃって、
いつも通りにウォッシュレットでキメて、
ウンチにGoodBYE.
その晩、
いつも通りぐっすり寝た。
快眠だ。
眠りは深く、目覚めも良い。
目覚ましもかけずに、
目が覚める。
AM6:00
『ん〜〜〜っ』
と、布団の中で伸びを1回。
今日も素敵な一日が始まる。
そう確信していた。
そして、
ちょっとオナラをしたくなった。
隣では娘がスヤスヤ。
その横にミコちゃん(チワワ♀)
その横にカミさん(ひと♀)
皆すやすや寝てる。
幸せを噛み締めた所で布団にくるまり、
オナラ、失礼します。
『プパパパパんッッ』
!!!!?????
反射的に海老ぞりをした。
お尻を上に持ち上げた。
なんか、おかしい!!!!!!!
いつものオナラじゃない!!!
次の瞬間、
肛門周辺から人の温もりを感じた・・・・
え?え?え???
冷や汗が吹き出した。
おそるおそる、パンツに手を差し込む。
手をお尻へ。
ん・・・・・
アウト!アウトだ!!!
完全にアウト!!!
漏れてる。
うんこ、漏れてる。
すぐに仰向けからにうつ伏せに、
スタイルチェンジ。
ミコちゃん(チワワ♀)が起きてる!
興奮している!!!
ミコ!!落ち着け!!!!
すぐにトイレに駆け込んだ。
やはり、手での確認だけでは認めたくない。
こんなの嘘だ。
夢だ。
31歳だ!!!!!
そう心で叫びながらトイレへ。
ズボンを下ろす。
パンツも下ろす。
目視、
凝視、
アウト!!!
完全にアウトだった。
うなだれて、
ノーパンで、汚いお尻で、
お風呂場へ。
身体を洗い、パンツを洗う。
31歳、うんこが漏れた。
早朝の風呂場にしゃがみ込み、
自分でパンツを洗っている。
ミコちゃん(チワワ♀)が脱衣所でシッポを振っている。
ミコ・・・・
今は一人にしてくれ。
今回の失敗の原因は一つ。
青だからといって、必ずしも進めではないという事だ。
確かに信号は青かった。
いや、蒼かった。
どう考えても、オナラOKなシチュエーション。
では、なぜ失敗したのか。
身体からのサインが少なかったが、
僕はお腹を壊していたんだ・・・。
お腹を壊す=下痢=腹痛
このセオリーを信じ過ぎていたのだ。
今考えると、昼間のメルティーウンチだけが
身体がくれたサインだった。
俺はここを見逃した。
シルキーなセレブだと勘違いした。
本当は、お腹を壊していたんだろう。
そのプロローグだったのだろう。
だけど、腹痛が全くなかった。
本当に、全く!!!
ここがトラップだった。
腹痛の無い下痢・・・・
こんなものが、世の中に存在するのか・・・!?
存在するとしたら、
漏洩を阻止出来るのか・・・・!?
数日間、悔しくて悔しくて、
パソコンに向かうたびに
【下痢 腹痛 なし】
の検索の日々。
【あります。】
パソコンさんは、そう答える。
参考
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1164194791
まさか・・・・
まさか・・・・
もう一度・・・
【下痢 腹痛 なし】
【あります。】
・・・・・。
妻にも
もちろんばれていた。
パンツを洗う俺の背中を目撃していたらしい。
小さな小さな背中だったとの事だ。
その後は、ミコちゃんがウンチする度に
俺の事見やがる・・・。
くそぉ・・・・・
青信号、
右見て、左見て、右見て、
渡りましょう。
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